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分布1,4):北海道、本州、四国、九州。東京、千葉、神奈川、埼玉の各都県では絶滅。国外ではヨーロッパ、東アジア、インド。
日本在来のスイレンの仲間。ため池や湖沼などに生育し、園芸種のスイレンを小型にしたような花を咲かせる。葉はコウホネの仲間やアサザの仲間と間違えやすいため注意が必要である。
ヒツジグサの概要
花期1) | : | 6-11月 |
希少度 | : | ★★★(やや稀) |
生活形 | : | 多年生の浮葉植物 |
生育環境1) | : | 腐植栄養または貧~中栄養の湖沼、ため池など |
学名3) | : | tetragonus「四角の」 |
和名2) | : | 未の刻(午後2時)に開くことからという(実際は午前中に開き夜に閉じる)。 |
ヒツジグサの形態
全体
ため池などの止水域に生育し、葉を水面に浮かべる。
水深の深い場所に生育する個体。
葉
葉はいわゆるスイレン型で長さ5-30㎝1)。
北日本へ行くほど葉が大きくなる傾向がある1)。
沈水葉は質が薄く長さ15㎝まで1)。
花
花は萼片が4枚で直径3-7㎝1)。
2-3日間開花し、1日目に雌しべ、2日目に雄しべが成熟する(雌性先熟)1)。
識別
花が咲いていれば識別は簡単だが、葉だけの状態では同じスイレン科のコウホネ属の一部や、ミツガシワ科アサザ属の植物と似ている。
園芸スイレンとの識別
本種と花が似ているのは同属の帰化植物である園芸スイレンNymphaea sp.くらいである。
園芸スイレンは葉がヒツジグサより大きく厚みがあり、花もより派手であることが多い。
葉に鋸歯や模様があったり、花が白色以外のものはすべて園芸スイレンである1)。
コウホネ属との識別
コウホネ属のうち、浮葉を主に形成するネムロコウホネやオグラコウホネなどは本種と葉がよく似る。
どちらも葉形に変異があり、葉だけを見ると間違えやすい。
ヒツジグサの葉裏が少なからず赤紫色を帯びること1)などが違い。
アサザ属との識別
アサザ、ガガブタ、ヒメシロアサザなどのアサザ属もヒツジグサと葉が似ている。
アサザ属の葉の裏には粒状の腺点があるため、これを確認すればヒツジグサではないことが分かる。
ヒツジグサの種内変異
北海道には、柱頭と周辺の雄しべが鮮やかな濃紅色となる変種エゾベニヒツジグサvar. erythrostigmaticaが分布する(学名は大橋ら(2015)2)より)。花以外の特徴はヒツジグサと同じで、北海道の特に東部と北部に多い1)。
また、日本のヒツジグサは北へ行くほど葉が大きい傾向があるなど、葉の形状や花弁の数に変異が多い1)。
葉身基部の湾入が浅いものはエゾノヒツジグサと呼ばれることがあるが2)、明確に区別することは困難であるとしてヒツジグサに含められる。
文献
1)角野康郎 2014. 『ネイチャーガイド 日本の水草』文一総合出版.
2)大橋広好・門田裕一・木原浩・邑田仁・米倉浩司(編)2015.『改訂新版 日本の野生植物 1 ソテツ科~カヤツリグサ科』平凡社.
3)Lorraine Harrison 2012. Latin for gardeners. Quid Publishing. (ロレイン・ハリソン 上原ゆう子(訳) 2014. 『ヴィジュアル版 植物ラテン語辞典』原書房.
4)NPO法人野生動物調査協会, NPO法人Envision環境保全事務所『日本のレッドデータ検索システム』http://jpnrdb.com/index.html. 2021/7/10閲覧.
編集履歴
2021/7/12 公開