植物 > 被子植物 > オモダカ目 > サトイモ科 > アオウキクサ属
分布1,2,4,8,9,10):北海道、本州、九州。現存産地は数少なく、特に西日本(近畿以西)では宮崎県のみである可能性がある。国外では南米を除く全大陸。温帯域が分布の中心。
湧水地などでごく稀に見られるウキクサの仲間。この仲間では例外的な形態をしており、沈水状態で浮遊している。水質汚濁等によって全国的に激減しており、見られる場所は少なくなっている。
ヒンジモの概要
花期2,4) | : | 日本での開花の観察例はない。 |
希少度 | : | ★★★★(稀) |
生活形2,4) | : | 沈水性の浮遊植物 |
生育環境2) | : | 湖沼、湿原の池塘、河川、水路など |
学名3) | : | trisulca「3つの溝がある」 |
ヒンジモの形態
葉状体
葉に見える部分は、茎と葉の区別がなく維管束もない「葉状体」と呼ばれるもの2,5)。
葉状体は水中に浮き、水面下に絡み合って群生する2)。
写真ではコウキクサ(水面上の明るい緑色のもの)と混生している。
葉状体は長さ7-10㎜、幅2-3㎜2)。
新しい群体が左右に形成され、「品」の字に似た形になることからこの和名がある1)。
葉状体の形状は特異で、国内の他のウキクサ類とは一見して区別できる。
シュウ酸カルシウムの白い結晶が目立つ2,4)。
花
開花は国内では観察例がない2,4)。
開花時は水面上に浮き上がるという2,4)。
識別
葉状体の形状、水中に浮遊する生育形などが特異で、識別は容易。
ヒンジモの生態
生育環境と産地の減少
本州以南では専ら湧水環境に生育するが、北海道では河跡湖のようにやや富栄養な水域にも見られる2,4)。
近年水質汚濁等の人為的な環境変化により激減しており、かつて日本最大のヒンジモ生育地とされた北海道の達古武沼でも2005年を最後に確認されなくなった6,7)。
湧水においてセリやコウキクサとともに生育するヒンジモ。すぐ下流にはナガエミクリ主体と考えられるミクリ類の群落が発達していた。
文献
1)大橋広好・門田裕一・木原浩・邑田仁・米倉浩司(編) 2015.『改訂新版 日本の野生植物 1 ソテツ科~カヤツリグサ科』平凡社.
2)角野康郎 2014. 『ネイチャーガイド 日本の水草』文一総合出版.
3)水谷智洋 2009. 『羅和辞典〈改訂版〉』研究社.
4)角野康郎 1994.『日本水草図鑑』文一総合出版.
5)清水建美 2001. 『図説 植物用語辞典』八坂書房.
6)角野康郎. (2007). 達古武沼における過去 30 年間の水生植物相の変遷. 陸水学雑誌, 68(1), 105-108.
7)加藤ゆき恵・苅部治紀(2023).釧路湿原達古武湖付近の小沼で絶滅危惧植物ヒンジモLemna trisulca L.(サトイモ科)を確認. 釧路市立博物館館報, 431, 7.
8)前田涼也・人見敬一・千野根純子・菊池隆寛・小林奈央・福田悦子(2021). 令和 3(2021)年度 湯ノ湖沈水植物植生調査. 栃木県保健環境センター年報 27, 80-83.
9)宮崎県 2020. 『三訂・宮崎県版レッドデータブック』https://www.pref.miyazaki.lg.jp/shizen/kurashi/shizen/page00193.html 2024年10月31日閲覧.
10)静岡県 2020. 『静岡県版 植物レッドリスト 2020』 http://www.pref.shizuoka.jp/kankyou/ka-070/wild/red_replace.html 2024年10月31日閲覧.
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2024/10/31 公開