植物 > 被子植物 > クスノキ目 > クスノキ科 > ゲッケイジュ属
分布:外国産の栽培種。偶発的に逸出する場合もあると考えられる。地中海沿岸原産1,2)。
ローレルの名で知られるクスノキ科の常緑樹。葉にはよい香りがある。庭木などとして栽培され、日本には自生しない。本ページで紹介しているものは山の中に野生状態で生育していたものである。
ゲッケイジュの概要
花期1) | : | 4月 |
希少度 | : | ? |
生活形1) | : | 常緑中高木 |
生育環境 | : | ? |
学名3) | : | nobilis「高貴な、高名な」 |
ゲッケイジュの形態
葉
葉は互生し、幅は中央で最大、葉身長6-10㎝2)。
縁は時に波打つ。
一見特徴に乏しいが、ちぎると強い香りがある。
脈腋にダニ室(domatium;膨らみに見えるもの)がある。
成木ではダニ室のない株はごく稀だという4)。
葉裏からもダニ室の存在が分かる。
樹皮
幼木の幹。
成木の樹皮は暗灰色(灰白色)で皮目がある2,5)。
生育環境
広葉樹林の林床に見られた幼木。
周囲にはもう1個体生育していた。
識別
葉は一見特徴に乏しいが、縁がしばしば波打つこと、ちぎると強い香りがあること、ダニ室があることなどを総合すれば識別は難しくない。
逸出帰化?
筆者は大阪府内の広葉樹林の林床でゲッケイジュ(実生~幼木)を確認している。
果実は鳥によって散布されるため6)、鳥によって運ばれた結果、周囲に人家のない環境で生育していたものと考えられる。
あまり山野への帰化の話は聞かないので、偶発的なもので再生産には至らないのかもしれない。
文献
1)大橋広好・門田裕一・木原浩・邑田仁・米倉浩司(編) 2015.『改訂新版 日本の野生植物 1 ソテツ科~カヤツリグサ科』平凡社.
2)林将之 2014.『山渓ハンディ図鑑14 樹木の葉 実物スキャンで見分ける1100種類』山と渓谷社.
3)Lorraine Harrison 2012. Latin for gardeners. Quid Publishing. (ロレイン・ハリソン 上原ゆう子(訳) 2014. 『ヴィジュアル版 植物ラテン語辞典』原書房.
4)Spooner B.M. 1988. A note on the galls and domatium of Laurus nobilis in Britain. Journal of the British Plant Gall Society 3(1);6-7.
5)鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014. 『ネイチャーウォッチングガイドブック 四季を通じて樹木を観察する 431種 樹皮と冬芽』誠文堂新光社.
6)Hampe A. 2003. Frugivory in European Laurel: How extinct seed dispersers have been substituted. Bird Study 50(3):280-284.
編集履歴
2023/11/9 公開