トウヒ属の概要
常緑高木。短枝を持たない2)。
世界に約35種、日本に6種がある。
葉の付け根に葉枕があること、葉先が尖ることも本属に共通する特徴。
葉の断面は扁平または四角形・菱形。
日本産トウヒ属一覧
6種が分布する。種の学名はIto et al.(2016)1)による。
和名 | 学名 | 国内分布 |
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アカエゾマツ | P. glehnii | 北、岩手 |
イラモミ | P. alcoquiana | 東北~中部 |
エゾマツ | P. jezoensis | 北~近畿 |
ハリモミ(バラモミ) | P. torano | 本、四、九 |
ヒメバラモミ | P. maximowiczii | 中部 |
ヤツガタケトウヒ | P. koyamae | 中部 |
識別【トウヒの仲間の見わけかた】
エゾマツ(トウヒ)は葉に裏表があることで簡単に識別できる。
アカエゾマツも若枝に毛が密生することで明確に識別可能。
残り4種は葉、若枝、球果などの特徴を見ながら慎重に同定したい。分布も参考になる。
エゾマツ(トウヒ) | アカエゾマツ | イラモミ(マツハダ) | ハリモミ | ヒメバラモミ | ヤツガタケトウヒ | |
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分布 | 北海道~近畿 | 北海道、岩手 | 東北南部~中部地方 | 本、四、九 | 長野、山梨、静岡 | 長野、山梨、静岡 |
葉 | 7-20㎜、表裏があり裏が白い | 6-13㎜ | 6-15㎜ | 15-25㎜、太い | 6-18㎜、細い | 6-25㎜ |
葉先 | 痛くない | 痛くない | 痛くない | 痛い | 痛い | 痛くない |
若枝 | 無毛、淡黄褐色 | 赤褐色の毛が密生 | 無毛~まばらに毛、赤みを帯びない | 無毛、やや赤みを帯びる | 無毛、やや赤みを帯びる | 無毛または腺毛、赤褐色 |
球果 | 3-6㎝(トウヒ)、4-8㎝(エゾマツ) | 4-8㎝ | 6-12㎝ | 8-10㎝ | 2.5-4.5㎝ | 4-10㎝ |
トウヒ属で唯一扁平な葉を持ち、裏表がはっきりしている(他の種は断面が菱形~四角形)。若枝は無毛で淡黄褐色、光沢がある。北海道に変種エゾマツ、福島県~紀伊半島に変種トウヒが分布する。
トウヒ属で唯一、若い枝に毛が密生する。葉は1㎝程度で密集してつく。北海道と岩手県早池峰山に分布する。
イラモミ(マツハダ)
葉は1.5㎝以下と小さく、やや湾曲してつく。若枝は灰褐色で無毛~まばらに毛があり、あまり赤みを帯びないことが大きな特徴。松ぼっくり(球果)は6-12㎝の円柱形。東北南部~中部地方に分布する。
葉は15-25㎜で硬く、触ると痛い。ヒメバラモミと似るが本種の葉はより太く、松ぼっくり(球果)は明らかに大きい(下表参照)。若枝は黄褐色~赤褐色で無毛。本州(福島県~近畿)、四国、九州に分布する。
ヒメバラモミ
葉は6-18㎜で硬く、触ると痛い。ハリモミと似るが本種の葉はより細く、松ぼっくり(球果)は明らかに小さい(下表参照)。若枝は黄褐色~赤褐色で無毛。長野県、山梨県、静岡県のみに分布する希少種。
ヤツガタケトウヒ
葉は6-25㎜で、触ってもあまり痛くない。若枝は赤褐色で無毛または腺毛が生える。長野県、山梨県、静岡県のみに分布する希少種。
文献
1)Ito, M., Nagamasu, H., Fujii, S., Katsuyama, T., Yonekura, Ebihara, A., Yahara, T. 2016. GreenList ver. 1.01, (http://www.rdplants.org/gl/)
2)大橋広好・門田裕一・木原浩・邑田仁・米倉浩司(編)2015.『改訂新版 日本の野生植物 1 ソテツ科~カヤツリグサ科』平凡社.
編集履歴
2021/7/1 公開
2021/10/31 識別の項を追加