マツ属の概要
常緑の高木、稀に低木。
枝に長枝と短枝があり、葉には鱗片葉と針形葉の2形がある。鱗片葉は長枝の表面と短枝の基部にあり、針形葉は短枝の上端にのみ2-5本束生する。
北半球に約110種、日本に7種ある1)。
日本産マツ属一覧
2亜属7種が分布する。種の学名はIto et al.(2016)4)による。
亜属の分類はGernandt et al.(2005)3)に従った。詳細は下記#分類の項を参照。
Strobus亜属
日本産は葉が5本束生する。
マツ亜属 Pinus
日本産は葉が2本束生する。
識別【マツの仲間の見わけかた】
1.スタート
2.”二葉松”(3種)
リュウキュウマツは分布が離れているため、通常はアカマツとクロマツの識別が問題となる。
樹皮と冬芽の色の違いがポイントだが、分かりにくいときは葉先を手のひらで触ってみよう。
アカマツの葉は柔らかいが、クロマツの葉は硬くて痛く感じるはずである。
なお、リュウキュウマツは両者の中間的ともいえる特徴を持っている。
アカマツ | クロマツ | リュウキュウマツ | |
---|---|---|---|
分布 | 本州~九州 | 本州~トカラ | 琉球(トカラ~与那国) |
冬芽 | 赤褐色 | 白色 | 赤褐色~やや白い |
樹皮 | 赤みを帯びる | 黒っぽい | 黒っぽい~やや赤い |
葉 | 柔らかく、痛くない | 硬く、痛い | 柔らかく痛くない。やや長い |
冬芽は赤褐色に見える。樹皮も赤みを帯びる。葉は比較的柔らかく、葉先を触ってもさほど痛くない。
冬芽は白く見える。樹皮は赤みを帯びず黒っぽい。葉は硬く、葉先を触ると痛い。
リュウキュウマツ
琉球に分布し、アカマツとクロマツの中間的な雰囲気。葉は3種の中で最も長い傾向。
3.”五葉松”(4種)
チョウセンゴヨウとヤクタネゴヨウは分布の限られる希少種。
ハイマツとゴヨウマツは葉がそっくりだが、出現標高が異なるほか、樹形や松ぼっくり(球果)の開き方も異なるため間違えることはあまりない。
ゴヨウマツはキタゴヨウとヒメコマツの2変種に分けられており、詳細はゴヨウマツのページを参照。
ハイマツ | ゴヨウマツ | チョウセンゴヨウ | ヤクタネゴヨウ | |
---|---|---|---|---|
分布 | 北海道~中部 | 北海道~九州 | 栃木~岐阜、愛媛 | 屋久島、種子島 |
標高 | 高山 | 冷温帯~亜高山 | 亜高山帯が中心 | 低地~山地 |
樹形 | 這う | 直立 | 直立 | 直立 |
球果 | 開かない | 開く | やや開き大型で縦長 | やや開く |
種子 | 翼はない | 翼がある | 翼はない | 翼はない |
葉 | 4-8㎝ | 3-10㎝ | 7-12㎝ | 5-8㎝ |
樹脂道 | 2個 | 2個 | 3個 | 3個 |
樹形は這う。球果は熟しても開かない。高山帯に分布する。
樹形は直立する。球果は熟すと開く。冷温帯~亜高山帯に分布する。変種キタゴヨウは葉が長く、変種ヒメコマツは葉が短い。
チョウセンゴヨウ
ゴヨウマツに似るが、種子に翼がない(ゴヨウマツにはある)。葉の横断面の樹脂道は3個(ゴヨウマツは2個)。葉は変種ヒメコマツよりも明らかに長く、変種キタゴヨウよりやや長い程度。本州、四国に局所的に分布する希少種。
ヤクタネゴヨウ
ゴヨウマツに似るが、種子に翼がない(ゴヨウマツにはある)。葉の横断面の樹脂道は3個(ゴヨウマツは2個)。屋久島・種子島に分布。
マツ属の分類
マツ属内の系統分類に関してはGernandt et al.(2005)3)に詳しい。
マツ属は大きくマツ亜属とStrobus亜属の2群に分けられ、それぞれさらに2つの節に細分される。マツ亜属は葉の維管束が2本で、葉鞘fascicle sheathが宿存性なのに対し、Strobus亜属は葉の維管束が1本、葉鞘が落ちやすい。
日本産の種ではアカマツ、クロマツ、リュウキュウマツがマツ亜属のマツ節Pinusに、ゴヨウマツ、ハイマツ、ヤクタネゴヨウ、チョウセンゴヨウがStrobus亜属のQuinquefoliae節に含まれる。
文献
1)大橋広好・門田裕一・木原浩・邑田仁・米倉浩司(編)2015.『改訂新版 日本の野生植物 1 ソテツ科~カヤツリグサ科』平凡社.
2)Stevens, P. F. (2001 onwards). Angiosperm Phylogeny Website. Version 14, July 2017 [and more or less continuously updated since]. http://www.mobot.org/MOBOT/research/APweb/. 2021年2月1日閲覧.
3)Gernandt D. S., López G. G., García S. O., Liston A. 2005. Phylogeny and classification of Pinus. Taxon 54(1), 29-42.
4)Ito, M., Nagamasu, H., Fujii, S., Katsuyama, T., Yonekura, Ebihara, A., Yahara, T. 2016. GreenList ver. 1.01, (http://www.rdplants.org/gl/)
編集履歴
2021/7/1 公開
2021/10/28 識別の項目を追加