植物 > 被子植物 > センリョウ目 > センリョウ科 > チャラン属
春に開花するセンリョウ科の多年草。その名の通り2本の花序を出すことが多いが、1から5本まで変化がある。花粉は主にアザミウマによって媒介されることが知られている。
フタリシズカの概要

花期2) | : | 4-6月 |
希少度 | : | ★★(普通) |
生活形1,2) | : | 多年草 |
生育環境 | : | 山野の林内2) |
学名3) | : | serratus「鋸歯のある」 |
フタリシズカの形態
葉
花
果実
識別
花序がついていれば識別は難しくない。
花が咲いているフタリシズカを「ヒトリシズカの蕾の状態」と誤認する例があるため注意が必要。
ヒトリシズカは葉が展開する時にはすでに花を咲かせている。
なお、属名の由来となっているチャランChloranthus spicatusは中国原産の木本種で花序は黄色く、琉球で逸出帰化の例がある4)。
ヒトリシズカとフタリシズカの識別
これら2種は名前が似ているが、実際に同属の近縁種である。
フタリシズカは①葯隔が短く糸状にならない、②花序はふつう分岐し2~5本(時に1本)、③葉の節間が長く0.5~2㎝。
ヒトリシズカは①葯隔が長く糸状になり、②花序はふつう1本、③葉の節間が短く4輪生に見える。

生態
受粉戦略
フタリシズカにおいて、主要なポリネーター(花粉媒介者)はアザミウマであることが知られている8)。
花糸が白くなると、花は香りを発して虫を呼ぶようである8)。
なお同属のキビヒトリシズカC. fortuneiもアザミウマ媒とされる8)。
フタリシズカとニホンジカ
フタリシズカはヒトリシズカとともに、ニホンジカの不嗜好性植物(食べるのを避ける植物)として知られる5,6)。
ニホンジカの増加とともに個体数を増した例が知られている7)。
文献
1)大橋広好・門田裕一・木原浩・邑田仁・米倉浩司(編) 2015.『改訂新版 日本の野生植物 1 ソテツ科~カヤツリグサ科』平凡社.
2)門田裕一・永田芳男・畔上能力 2013. 『ヤマケイハンディ図鑑2 山に咲く花 増補改訂新版 山溪ハンディ図鑑』山と溪谷社.
3)Lorraine Harrison 2012. Latin for gardeners. Quid Publishing. (ロレイン・ハリソン 上原ゆう子(訳) 2014. 『ヴィジュアル版 植物ラテン語辞典』原書房.
4)大森雄治. (1999). 日本のドクダミ科・コショウ科・センリョウ科植物. 横須賀市博物館研究報告. 自然科学: Science report of the Yokosuka City Museum, (46), 9-21.
5)牧野結衣, 平尾聡秀, & 梅木清. (2020, December). 奥秩父山地におけるシカ不嗜好性植物 2 種の分布域拡大過程. In 環境情報科学論文集 Vol. 34 (2020 年度 環境情報科学研究発表大会) (pp. 156-161). 一般社団法人 環境情報科学センター.
6)藤木大介. (2017). 兵庫県におけるニホンジカの嗜好性植物・不嗜好性植物リスト.
7)村上雄秀. (2007). シカ食害下の丹沢山地の植生変遷について. 生態環境研究, 14(1), Body3.
8)YI-BO, L. U. O., & Zhen-Yu, L. I. (1999). Pollination ecology of Chloranthus serratus (Thunb.) Roem. et Schult. and Ch. fortunei (A. Gray) Solms-Laub.(Chloranthaceae). Annals of Botany, 83(5), 489-499.
編集履歴
2024/3/3 公開