分布1):北海道~紀伊半島。国外では南千島、サハリン、カムチャツカ半島、ウスリー、沿海州、朝鮮半島、中国(東北)。
日本に6種あるトウヒの仲間のうち、扁平な葉を持つ唯一の種。北海道に変種エゾマツ、本州に変種トウヒがある。
エゾマツの概要
花期1) | : | 5-6月 |
希少度 | : | ★★(普通) |
大きさ1) | : | 高さ30-35m(変種エゾマツ)/20-30m(変種トウヒ) |
生活形 | : | 常緑高木 |
生育環境2) | : | 主に亜高山帯 |
学名 | : | jezoensis「蝦夷(北海道)の」 |
エゾマツの形態
葉
長さ:変種エゾマツは10-20㎜、変種トウヒは7-10(15)㎜1,2)。
葉先:尖るが、触って痛いほどではない2)。
葉の形:扁平で、表裏がはっきりと分かることが大きな特徴2)。
葉裏:2本の白い気孔帯がある。
一年枝:無毛。トウヒ属共通の特徴である葉枕(ようちん)が発達している。
識別
日本産針葉樹全体の識別については「針葉樹の見わけかた」のページをご参照ください。
また、トウヒ属全種の比較表については「トウヒ属」のページをご参照ください。
識別のポイント
日本産トウヒ属は本種を含め6種あるが、葉の断面が扁平なのは本種のみ1,2)。他の種の断面は四角形や菱形をしている。葉が平らで、裏だけが明らかに白ければエゾマツ(トウヒ)である。
また、アカエゾマツは一年枝に毛が密生することでも区別可能。
エゾマツ(トウヒ)の種内分類群
変種エゾマツと変種トウヒの違い
国内のエゾマツは変種エゾマツvar. jezoensisと変種トウヒvar. hondoensisの2変種に分けられる。
変種エゾマツ | 変種トウヒ | |
---|---|---|
分布1,3) | 北海道、岩手県(?) | 福島県~紀伊半島 |
葉の長さ1,2) | 10-20㎜ | 7-10(15)㎜ |
樹高1) | 30-35m | 20-30m |
樹皮1) | 灰褐色で深く裂ける | 暗赤褐色で薄く剥がれる |
冬芽1) | 先が尖る | 先が尖らない |
球果1) | 長さ4-8㎝ | 長さ3-6㎝ |
標高 | 低地~亜高山帯 | 亜高山帯 |
変種エゾマツ:北海道、岩手県早池峰山(?)に分布。葉が長い。
変種トウヒ:福島県~中部地方の亜高山帯、紀伊半島の大台ケ原山と大峰山系に分布1,3)。葉は変種エゾマツより短い。
オゼトウヒ
変種トウヒの分布北限にあたる福島県尾瀬地方には樹皮が変種エゾマツと酷似したオゼトウヒvar. hondoensis f. ozeensisがある。変種エゾマツとされたこともあったが、遺伝解析の結果変種トウヒに含められた3)。
シロエゾマツ
北海道の変種エゾマツの中には、樹皮がトドマツに似て全く裂けないシロエゾマツvar. jezoensis f. takadaeと呼ばれる個体が見られる。樹皮以外の特徴は変種エゾマツと同じであることから品種として分類されている3)。
チョウセントウヒ
朝鮮半島と中国東北地方南部には変種チョウセントウヒvar. koreanaがあり、海外も含めるとエゾマツは3変種に分類されていることになる。変種チョウセントウヒは形態的には変種トウヒと酷似している3)。
※本項の変種・品種の学名は逢沢(2013)3)による。
文献
1)大橋広好・門田裕一・木原浩・邑田仁・米倉浩司(編) 2015.『改訂新版 日本の野生植物 1 ソテツ科~カヤツリグサ科』平凡社.
2)林将之 2014.『山渓ハンディ図鑑14 樹木の葉 実物スキャンで見分ける1100種類』山と渓谷社.
3)逢沢峰昭 2013. シリーズ:日本の森林樹木の地理的遺伝構造(3)エゾマツ類(マツ科トウヒ属). 森林遺伝育種 2(3): 104-108.
編集履歴
2021/7/1 公開