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分布:北海道、本州(中部地方以北)1,2)。奈良県のレッドデータブック2016には絶滅寸前種として記載があるが詳細不明4)。国外では朝鮮半島、中国、ロシア。
冷涼な地域の林縁などに生えるつる性の落葉樹。先が幅広い葉形や、葉の表面の皺が特徴的である。生薬の「五味子」として薬用に用いられ、薬用植物園などで栽培される。雌雄同株で、年によって性の異なる花をつけることがわかっている。
チョウセンゴミシの概要
花期1) | : | 5-7月 |
希少度 | : | ★★★(やや稀) |
生活形 | : | 落葉性のつる性木本 |
生育環境2) | : | 冷温帯の山地の林縁や明るい林内 |
学名3) | : | chinensis「中国産の」 |
和名5) | : | 朝鮮半島から持ち込まれたと考えられていたことから。ゴミシは生薬名「五味子」。 |
利用5) | : | 生薬として滋養強壮、咳止め薬(果実)。 |
チョウセンゴミシの形態
葉
葉身は根元よりも先のほうが幅広い(倒卵形)。
長さ4-10㎝1)。
落葉樹らしく薄い質感で、表面は葉脈に沿ってくぼみ、しわが目立つ。
葉裏は脈上にしばしば突起があるがあまり目立たない。
葉柄はしばしば赤みを帯びる。
花
花は直径約1㎝で香りがする1)。
雌雄異花。個体の雌雄性については下記を参照。
チョウセンゴミシの雌雄性
チョウセンゴミシは雌雄異株とされてきたが、山口(1990,1991)6,7)によると、実際には多くの場合雌雄同株であるらしい。
年によって雄花をつけるか、雌花をつけるか、または両方をつけるのかが異なるため、そのような誤解が生じたと考えられる。
個体のサイズと性表現との相関についてははっきりしないようだ。
チョウセンゴミシの生育環境
冷涼な地域の林縁や明るい林内に生育する。
長野県においてはカラマツ植林地の林床を中心に分布しているとの調査結果がある5)。
開花個体の周辺、路傍の草むらの中に幼木が多く見られた。
自生地においては個体数は多い2)。
識別
同属のマツブサは北海道南部~九州のより暖かい地域に分布する。葉の形はやや似るが、葉身は中央付近で幅が最大となり、肉厚で常緑樹のような光沢がある。葉脈がくぼむこともないため、一見して印象が異なる。
ニシキギ科のツルウメモドキにも葉の形がやや似るが、ツルウメモドキの葉には光沢があり、鋸歯も細かいため識別は難しくない。
文献
1)大橋広好・門田裕一・木原浩・邑田仁・米倉浩司(編)2015.『改訂新版 日本の野生植物 1 ソテツ科~カヤツリグサ科』平凡社.
2)林将之 2014.『山渓ハンディ図鑑14 樹木の葉 実物スキャンで見分ける1100種類』山と渓谷社.
3)Lorraine Harrison 2012. Latin for gardeners. Quid Publishing. (ロレイン・ハリソン 上原ゆう子(訳) 2014. 『ヴィジュアル版 植物ラテン語辞典』原書房.
4)奈良県 『レッドデータブック2016改訂版 選定種目録(奈良県レッドリスト)』http://www.pref.nara.jp/dd.aspx?menuid=46865. 2021/7/14閲覧.
5)荒瀬輝夫, 岡野哲郎, 内田泰三 2017. 結実期のチョウセンゴミシ (Schisandra chinensis) の生育特性. 信州大学農学部AFC報告 15:47-53.
6)山口陽子 1990. チョウセンゴミシの開花結実特性. 日本林学会北海道支部論文集 38:73-75.
7)山口陽子 1991. チョウセンゴミシの開花結実特性(II) : 2年間の性表現の変化. 日本林学会北海道支部論文集 39:20-21.
編集履歴
2021/7/15 公開