植物 > 被子植物 > オモダカ目 > サトイモ科 > ハブカズラ属
分布1,2):沖縄諸島~先島諸島。先島では普通に見られるが沖縄ではやや少ない2)。逸出もある。奄美群島では野生化。海外では台湾、中国南部、東南アジア1)。
琉球列島に自生、また野生化しているサトイモ科のつる性木本で、園芸植物のオウゴンカズラ(ポトス)と同属。大型の葉は羽状に裂け、独特の外観となる。
ハブカズラの概要
花期1) | : | 5-6月。 |
希少度 | : | ★★(普通) |
生活形1) | : | 常緑つる性木本 |
生育環境2) | : | 低地~山地の林内 |
学名3) | : | pinnatus「羽状の」 |
ハブカズラの形態
葉
葉は互生で全縁、葉身長20-60㎝と大きくなる2)。
大きな葉は左右不同の羽状に切れ込む。
幼形葉は長卵形で切れ込みがないか、1~数か所で深く切れ込む1,2)。
幼形葉。
つるは木の幹などに巻き付き付着根を出し、最終的に高さ5-10mまで登っていく2)。
花
円筒形の肉穂花序で、長さ10-15㎝1)。
識別
ヒメハブカズラ属の2種との識別
在来の近縁種としては別属のサキシマハブカズラ、ヒメハブカズラがある。
サキシマハブカズラは石垣島と西表島にごく稀に生育し、幼形葉は円形に近く基質に張り付くように付く。成葉は葉身長90㎝に達し長楕円形で中央脈まで深く羽状に切れ込む2)。
ヒメハブカズラも石垣島と西表島にごく稀に生育し、幼形葉は小さく倒卵形。成葉は長さ30㎝程度までで、長楕円形で細長くふつう切れ込まない2)。
オウゴンカズラとの識別
琉球においては「ポトス」として栽培されているオウゴンカズラが野生化している場合がある。
オウゴンカズラはハブカズラと同属でよく似るが、斑が入る葉が多くあまり裂けない傾向。ただし大型の葉では羽状に深裂することもある。小型の葉はハブカズラの幼形葉よりも幅が広く卵形2)。
ハブカズラの生態
ポリネーター
海外における例としては、ショウジョウバエ科タロイモショウジョウバエ属のColocasiomyia giganteaが本種の肉穂花序を繁殖場所および餌資源として利用することが報告されている4,5)。
タロイモショウジョウバエ属の多くはサトイモ亜科の植物をホストとして利用するが、C. giganteaとその近縁種は例外的に亜科Monsteroideaeの植物を利用するという5)。
このハエがポリネーターとしても機能しているかどうかは直接確かめられたわけではない4)。
分類
ハブカズラ属はヒメハブカズラ属Rhaphidophoraと極めてよく似ており、ヒメハブカズラ属に含められたこともある1)。
現在のハブカズラ属には約20種があり、スリランカから東南アジア、中国、台湾などに分布する1)。
園芸植物のオウゴンカズラは旧属名から通称ポトスと呼ばれるが、現在はハブカズラ属に属すとされる。
文献
1)大橋広好・門田裕一・木原浩・邑田仁・米倉浩司(編) 2015.『改訂新版 日本の野生植物 1 ソテツ科~カヤツリグサ科』平凡社.
2)林将之 2016. 『ネイチャーガイド 琉球の樹木 奄美・沖縄~八重山の亜熱帯植物図鑑』文一総合出版.
3)Lorraine Harrison 2012. Latin for gardeners. Quid Publishing. (ロレイン・ハリソン 上原ゆう子(訳) 2014. 『ヴィジュアル版 植物ラテン語辞典』原書房.
4)Jiménez, P. D., Hentrich, H., Aguilar-Rodríguez, P. A., Krömer, T., Chartier, M., & Gibernau, M. (2019). A Review on the Pollination of Aroids with Bisexual Flowers1. Annals of the Missouri Botanical Garden, 104(1), 83-104.
5)Fartyal, R. S., GAO, J. J., Toda, M. J., HU, Y. G., Takano, K. T., Suwito, A., … & YIN, J. T. (2013). Colocasiomyia (D iptera: D rosophilidae) revised phylogenetically, with a new species group having peculiar lifecycles on monsteroid (A raceae) host plants. Systematic Entomology, 38(4), 763-782.
編集履歴
2024/3/24 公開