植物 > 被子植物 > クスノキ目 > クスノキ科 > スナヅル属
分布1,2,4):四国(高知)、九州(鹿児島県佐多岬)、琉球、小笠原。国外では世界中の熱帯に広く分布。
クスノキ科としては珍しい寄生植物。日本では亜熱帯の砂浜で見られ、ときに一面を覆いつくして異様な景観を作り出す。姿の似たネナシカズラの仲間とは縁遠く、収斂進化の一例として語られることも多い。
スナヅルの概要
花期1) | : | 周年 |
希少度 | : | ★★(普通) |
生活形1) | : | つる性寄生性草本 |
生育環境1,2) | : | 海岸の砂地 |
学名3,5) | : | fili-「糸状の」+-formis「形をした」 |
スナヅルの形態
茎
茎は砂浜を這うように伸び、寄主植物に吸収根で付着しながら絡みつき、横に長く広がる。
葉は鱗片状で互生する。
茎はほぼ無毛。
グンバイヒルガオに寄生しながら広がるスナヅル。
寄主は幅広い。
ツキイゲに寄生するスナヅル。
花
花は穂状花序につき、直径約3㎜で両性1)。
花被片は淡黄色。
果実
果実は球形で直径6-7㎜1)。
はじめ緑色で淡黄色に熟す1)。
生態
繁殖
西表島での研究から、本種は少なくとも種子繁殖を行っていることが分かっている2)。
また、種子散布については海流散布や一部動物による散布の可能性も指摘されているが、未解明2)。
寄主植物
本種が寄生する対象(ホスト)は幅広く、主に草本であるが木本にも寄生することが知られている。
琉球各島で調査を行った研究6)では、ホストとして確認された種として例数が多い順にグンバイヒルガオ、クロイワザサ、コシロノセンダングサ、クサトベラ、タイワンカモノハシ、アダン、ヒレザンショウ、ハマゴウ、ボタンボウフウ、キダチハマグルマ、ハマナタマメ、モクマオウ、ハマボッス、ハウチワノキ、etc.となっており、寄主特異性の低さがわかる。
一方、分布の限られるイトスナヅルではホストとして2種のみが確認され、寄主特異性が高い可能性があるとされている。
識別
スナヅル属以外で見間違うとすれば、同じく寄生植物でヒルガオ科のネナシカズラ属である。
琉球にもネナシカズラやアメリカネナシカズラなど複数種が分布しており、同様の環境にあって一見して似ているため注意が必要。
花や果実の形態が大きく異なるほか、スナヅルのほうが茎の質が硬い。
スナヅル属の他種については次項参照。
スナヅルの種内変異・近縁種
変種ケスナヅル var. duripraticola
沖縄諸島に稀。スナヅルの変種で、全体やや細く、茎に褐色の毛が密生する。
国外では台湾や東南アジアにも同様のタイプが見られる。
イトスナヅル C. pergracilis
久米島と伊是名島に分布する固有種。
久米島からは最近の記録がなく、希少種となっている。
全体に細く、花も小さく花数も少ない。
寄主植物としてオオマツバシバとイガクサの2種が知られている6)。
文献
1)大橋広好・門田裕一・木原浩・邑田仁・米倉浩司(編) 2015.『改訂新版 日本の野生植物 1 ソテツ科~カヤツリグサ科』平凡社.
2)岩瀬剛二, イワセコウジ, 乙幡奨平, オッパタショウヘイ, 荻野優奈, オギノユウナ, … & テラシマヨシエ. (2014). 寄生性つる植物スナヅルの生活史解明に関する調査研究. 帝京科学大学紀要, 10, 37-41.
3)Lorraine Harrison 2012. Latin for gardeners. Quid Publishing. (ロレイン・ハリソン 上原ゆう子(訳) 2014. 『ヴィジュアル版 植物ラテン語辞典』原書房.
4)高知県 2020. 『高知県レッドリスト(植物編)2020年改訂版』https://www.pref.kochi.lg.jp/soshiki/030701/2020032500321.html 2023年12月12日閲覧.
5)水谷智洋 2009. 『LEXICON LATINO-JAPONICUM Editio Emendata 羅和辞典 〈改訂版〉』研究社.
6)Kokubugata, G., & Yokota, M. (2012). Host specificity of Cassytha filiformis and C. pergracilis (Lauraceae) in the Ryukyu Archipelago. Bull. Natl. Mus. Nat. Sci. Ser. B, 38, 47-53.
編集履歴
2023/12/13 公開