植物 > 被子植物 > クスノキ目 > クスノキ科 > クロモジ属
分布1,2,4):中国地方(一部)、四国、九州。海外では朝鮮半島南部。※ウスゲクロモジを除いた分布。
早春に黄色い花を咲かせるクロモジの仲間で、より南方に分布する。その名の通り、葉の両面に軟毛が多いのが特徴である。ウスゲクロモジは本種の変種とされるが、別種との意見もあり、よく似ているため識別には注意が必要。
ケクロモジの概要
花期1) | : | 4月 |
希少度 | : | ★★★(やや稀) |
生活形 | : | 落葉低木 |
生育環境2) | : | 山地の落葉樹林内 |
学名3) | : | sericeus「絹毛で覆われた」 |
ケクロモジの形態
葉
葉は枝先に集まってつき、葉身長6-12㎝2)。
より北に分布するクロモジ(変種クロモジ)よりも一見して大きく、変種オオバクロモジに近い大きさ。
表裏ともに毛が多く、クロモジとは質感が異なる。
葉裏の葉脈が強く隆起することが、本種やウスゲクロモジの大きな特徴。
葉表には短い軟毛(絨毛)が密生し、秋まで残る。
本種の変種とされているウスゲクロモジ(別種説もある)では、葉表の短い軟毛がなく、脈上の絹毛のみ。
葉柄、若枝の毛。
ここから3枚は、林床の幼木の葉。
やや質が薄く感じられる。
葉表の短毛(林床の幼木)。
目立たないが、全面にあり秋まで残っている。
葉裏(林床の幼木)。
果実
若い果実。
果柄は長く、2㎝を超える。
未熟な果実。
秋には黒く熟す。
樹皮
幼木の樹皮。
ウスゲクロモジについて
ウスゲクロモジは関東以西のやや高標高の山地に分布しており、ケクロモジよりも毛が少ない。
ケクロモジの変種とされることが多いが、独立種という意見も強く分類は未確定。
小山(1987)4)は形態上の類似性からケクロモジよりもヒメクロモジに近縁だろうとしている。
識別
葉が枝先に集まってつくことや、枝が緑色であることを確認すればクロモジの仲間であることは分かりやすい。
一方で近縁なウスゲクロモジやヒメクロモジなどとの識別は簡単ではない。
分布域からある程度絞り込むことができる。
識別点についてはクロモジのページを参照。
文献
1)大橋広好・門田裕一・木原浩・邑田仁・米倉浩司(編) 2015.『改訂新版 日本の野生植物 1 ソテツ科~カヤツリグサ科』平凡社.
2)林将之 2014.『山渓ハンディ図鑑14 樹木の葉 実物スキャンで見分ける1100種類』山と渓谷社.
3)Lorraine Harrison 2012. Latin for gardeners. Quid Publishing. (ロレイン・ハリソン 上原ゆう子(訳) 2014. 『ヴィジュアル版 植物ラテン語辞典』原書房.
4)小山博滋 1987. クロモジ群の分類と分布. 植物分類・地理 38:161-175.
編集履歴
2023/11/5 公開