植物 > 被子植物 > クスノキ目 > ハスノハギリ科 > ハスノハギリ属
分布1,2):琉球、小笠原。琉球における東限は喜界島、西は与那国島まである。国外では台湾、海南島、東南アジア、スリランカ、アフリカ東部、ポリネシア、ミクロネシアに広く分布。
琉球や小笠原の海岸近くで見られる樹木。名前の通り、葉柄がハスの葉のように盾状につくのが大きな特徴である。果実はタマネギのような質感の総苞に包まれた独特な形。大きいものでは高さ20mにもなる。
ハスノハギリの概要
花期1,2) | : | 7-8月。冬~早春にも咲くようである。 |
希少度 | : | ★★★(やや稀) |
生活形 | : | 常緑高木 |
大きさ1) | : | 高さ7-20m |
生育環境2) | : | 海沿い。防風林や公園樹として植栽もされる。 |
学名 | : | nymphaeifolia:「スイレン(Nymphaea)のような葉の」 |
ハスノハギリの形態
葉
葉は葉身長10-30㎝、互生で全縁1)。
和名の通り、葉柄がハスのように盾状につく。
オオバギよりも厚く、光沢があり、葉先があまり伸びない。
親木の下に発生した実生。
果実
果実は主に10-11月に熟し、直径約3㎝の総苞に包まれる1)。
総苞は果実が熟すと黄色または赤色になる1)。
総苞には先端に穴があり、中に果実が見える。
黒色のこの部分が果実(核果)。
花
雌雄同株、花は雌雄異花。
花は小さく、花被片は雌花で4㎜、雄花で3㎜ほど1)。
花序の枝先の中央に雌花が1個、その脇に雄花が2個つく3)。
雌花は花被片が4枚×2輪の8枚、雄花は3枚×2輪の6枚1)。
樹形・樹皮
成木。
岩場では高さ2-3mでも花が咲くという1)。
樹皮は縦筋が入るかやや浅裂する2)。
他種との識別
葉柄がハスの葉のように盾状につくことが非常に特徴的。
以下の2種はやや似るため注意が必要である。慣れれば迷うことはない。
オオハマボウとの識別
アオイ科のオオハマボウは同じく琉球や小笠原の海岸に生え、遠目にはやや似て見えることがある。
しかし葉柄は盾状ではなく、葉身基部が心形になっているため区別は容易。
オオバギとの識別
トウダイグサ科のオオバギは琉球に分布し、葉柄が盾状につく点が同じで、葉形もよく似ている。
以下の点に着目すれば見分けは難しくない。
- オオバギのほうが葉の質が薄い。
- オオバギのほうが光沢が弱い。
- オオバギのほうが側脈(主脈から平行に出る葉脈)の数が多い。
- オオバギのほうが葉先が長く伸びる傾向がある。
なお、オオバギのほうが個体数が多く、より普通に見られる。
文献
1)大橋広好・門田裕一・木原浩・邑田仁・米倉浩司(編) 2015.『改訂新版 日本の野生植物 1 ソテツ科~カヤツリグサ科』平凡社.
2)林将之 2016. 『ネイチャーガイド 琉球の樹木 奄美・沖縄~八重山の亜熱帯植物図鑑』文一総合出版.
3)片野田逸朗 2019. 『Illustrated Field Guide to the Flora of Ryukyu 琉球弧・植物図鑑 from AMAMI』南方新社.
編集履歴
2022/3/21 公開
2022/9/19 分布を一部修正