植物 > 被子植物 > スイレン目 > スイレン科 > オニバス属
分布1,2):本州、四国、九州。宮城県では絶滅し、現在の北限は新潟県。南限は鹿児島県。
国外ではインド、中国(南部)、台湾、朝鮮半島、ロシア(沿海地方)。
巨大な円形の葉を水面に浮かべる一年生の水草。その直径は大きいものでは2mを超える。夏に咲く花は紫色で美しい。駆除や生育環境の破壊によって急速に数を減らし、絶滅の危機に瀕している。
オニバスの概要
花期1) | : | 7-9月(閉鎖花は6月下旬-10月) |
希少度 | : | ★★★★(稀) |
生活形 | : | 一年生の浮葉植物 |
大きさ1) | : | 葉の直径は最大2mを超える |
生育環境1,3) | : | やや富栄養化した平地の池など |
学名4) | : | ferox「凶暴な、刺が多い」 |
オニバスの形態
葉
葉は0.3-1.5m、時に2mを超え1)、日本産水草中最大。
水面に浮く(浮葉)。
抽出して間もない若い葉。皺が目立つ。
表面には皺がある。
若い葉が古い葉の上に乗るようにして展開する。
葉裏は網目状になっている。
葉表から葉裏、葉柄にいたるまで、鋭く硬い棘に覆われる。
冬の様子。
一年草であるため、冬には枯れて残骸だけが残る。
生育初期の葉
種子から芽生えて間もない時期の葉は形態が異なる。
第1葉は針状、第2葉は細いほこ形、第3葉は広い矢尻型で、通常第4葉から浮葉となる5)。
浮葉もはじめのうちはスイレンのように基部に切れ込みがあり、徐々に盾状のハス形に近づいていく。
花
開放花は7-9月に開く。
時に葉を突き破って水面に出る。
葉から花茎が出ているわけではない。
花弁は美しい紫色。
写真のものは開ききっていない。
なお、種子生産の大部分は閉鎖花による1)。
識別
国内に類似種はいない。
ハスは多年草で、葉の表面に皺がなく、水面から上に飛び出す葉(抽水葉)を作る。
スイレンの仲間も多年草であり、葉の表面に皺がなく、葉の基部には常に切れ込みがある。
なお、植物園などで栽培されるパラグアイオニバスVictoria cruzianaやオオオニバスV. amazonicaは日本には分布しない。
これらはオニバスとは別属(オオオニバス属:和名は3)より)で、葉の縁が上に反ってタライ状になる。
日常会話ではこれらがしばしばオニバスと混同されているため注意が必要である。
文献
1)角野康郎 2014. 『ネイチャーガイド 日本の水草』文一総合出版.
2)NPO法人野生動物調査協会, NPO法人Envision環境保全事務所『日本のレッドデータ検索システム』http://jpnrdb.com/index.html. 2021/7/4閲覧.
3)大橋広好・門田裕一・木原浩・邑田仁・米倉浩司(編)2015.『改訂新版 日本の野生植物 1 ソテツ科~カヤツリグサ科』平凡社.
4)Lorraine Harrison 2012. Latin for gardeners. Quid Publishing. (ロレイン・ハリソン 上原ゆう子(訳) 2014. 『ヴィジュアル版 植物ラテン語辞典』原書房.
5)本多郁夫 2019. 石川県産オニバスの今昔. 植物地理・分類研究 67(1): 29-40.
編集履歴
2021/7/4 公開