イヌガヤ Cephalotaxus harringtonia

植物 > 裸子植物 > ヒノキ目 > イチイ科 > イヌガヤ属

福岡県糸島市 2021/3/7
※分布図は目安です。

分布1):北海道、本州、四国、九州(屋久島まで)。国外では朝鮮半島、中国(東北)。

山地の林床でよく目にする常緑針葉樹。平面上に並ぶ葉が特徴的。カヤの葉先は触ると痛いが、本種の葉は柔らかく触っても痛くない。

イヌガヤの概要

花期1)3-4月
希少度★★(やや普通)
大きさ1)高さ8-10m
生活形常緑低木~小高木
生育環境2)丘陵~山地の林内

イヌガヤの形態

福岡県糸島市 2021/3/7

葉は長さ3-4㎝前後、綺麗に平面に並ぶ。

岐阜県飛騨市 2014/9/21

葉裏には白~緑白色の気孔帯が2本あり、幅はカヤよりも広い。

雄花

大阪府茨木市 2014/4/6

雄株と雌株がある(雌雄異株)。

大阪府茨木市 2014/4/6

雄花は前の年の葉の付け根につく。

冬芽

大阪府茨木市 2014/4/6

枝先に3つの冬芽ができるのが標準的。
この画像ではやや変則的な配置をしているものと思われる。

大阪府茨木市 2014/2/20

前年枝の付け根に新たに冬芽ができている例。
葉はふつう平面に並ぶが、部位によりらせん状に並ぶ場合もある。

樹皮

福岡県糸島市 2021/3/7

樹皮は縦に浅く裂ける。

大阪府茨木市 2014/2/20

やや若い個体の樹皮。

イヌガヤの種内変異

変種イヌガヤと変種ハイイヌガヤ

イヌガヤには変種イヌガヤvar. harringtoniaと変種ハイイヌガヤvar. nanaの2つの変種がある。
イヌガヤは基変種で、北海道(西南部、北限は利尻島)、本州(日本海側)、四国(一部)1)に分布する。
ハイイヌガヤは多雪地に適応した変種で、本州(岩手県陸前高田市以南)、四国、九州1)に分布する。
それぞれ樹形、葉の大きさに違いがある。

イヌガヤハイイヌガヤ
樹形直立する這う
葉の長さ1)30-50㎜25-35㎜
葉の幅1)3-4㎜2.5-3㎜
イヌガヤの2変種の形態的特徴
ハイイヌガヤ 長野県大町市 2015/5/3

ハイイヌガヤは多雪地の林床にしばしば群生し、一面を覆うように生える。

ハイイヌガヤ 長野県大町市 2015/5/3

葉は変種イヌガヤとよく似るが、やや短く幅が狭い。

識別

日本産針葉樹全体の識別については「針葉樹の見わけかた」のページをご参照ください。

識別のポイント

日本産イチイ科には本種のほか、イチイとカヤの合計3種がある。
3種は葉の並び方などがよく似ているが、葉の形態や果実、種子などに違いがある。

イチイカヤイヌガヤ
イチイ属カヤ属イヌガヤ属
分布北~九本~九北~九
葉先痛くない尖り、痛い痛くない
気孔帯幅広く薄い細く濃く目立つ幅広く薄い~濃い
種子赤く液状の仮種皮に覆われる緑褐色の仮種皮に覆われる仮種皮に覆われない
国内産イチイ科3種の特徴まとめ

種子は常に見られるわけではないため、葉で見分けられるようになると便利である。

イチイ

葉はやや不揃いに並び、葉先は痛くない

カヤ

葉はほぼ平面に並び、先は尖り痛い

イヌガヤ

葉は綺麗に平面に並び、先は痛くない

イチイ

葉裏は白い部分(気孔帯)が幅広く、また薄く目立たない。

カヤ

気孔帯は細く、目立つ。

イヌガヤ

気孔帯は幅広く、個体により濃淡に差がある。

イヌガヤの分類

本種の含まれるイヌガヤ属を、イヌガヤ科Cephalotaxaceaeとして別の科とする説もある。
詳細はイチイ科の項を参照。

文献

1)大橋広好・門田裕一・木原浩・邑田仁・米倉浩司(編) 2015.『改訂新版 日本の野生植物 1 ソテツ科~カヤツリグサ科』平凡社.
2)林将之 2014.『山渓ハンディ図鑑14 樹木の葉 実物スキャンで見分ける1100種類』山と渓谷社.

編集履歴

2021/7/1 公開