アカエゾマツ Picea glehnii

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アカエゾマツ
北海道鹿追町 標高約1000m 2018/8/11
※分布図は目安です。

分布1):北海道、本州(岩手県早池峰山)。国外では南千島、サハリン。

主に北海道の亜高山帯に生えるトウヒの仲間。街路樹などとして植栽もされる。エゾマツやトドマツと似るが、葉が短いので遠目でも分かりやすい。

アカエゾマツの概要

花期1)6-7月
希少度★★(普通)
大きさ1)高さ40m、幹径1.5m
生活形常緑高木
生育環境2)主に亜高山帯の岩場、湿地など

アカエゾマツの形態

葉と枝

北海道鹿追町 標高約1000m 2018/8/11

葉は0.6-1.3cmと短く、トウヒ属中最短2)。密集してつく様子が特徴的。

北海道鹿追町 標高約1000m 2018/8/11

裏。先は尖るが鋭くはなく、触っても痛くない2)

北海道鹿追町 標高約1000m 2018/8/11

若枝には赤褐色の毛が密生する(画像では濡れていて分かりにくい)。

樹皮

北海道鹿追町 標高約1000m 2018/8/11

樹皮は赤褐色で不揃いの薄い鱗片に剥がれる1)

幼木

北海道鹿追町 標高約1000m 2018/8/11

幼木も小型の葉が密集している様子が特徴的。周囲に生えているのはカラフトイソツツジ。

識別

日本産針葉樹全体の識別については「針葉樹の見わけかた」のページをご参照ください。
また、トウヒ属全種の比較表については「トウヒ属」のページをご参照ください。

識別のポイント

日本産のトウヒ属は6種あり、そのうちアカエゾマツと分布が被るのはエゾマツのみ。
トウヒ属で一年枝に毛が密生するのはアカエゾマツのみであるとことを覚えておくとよい。
また、北海道ではモミ属のトドマツも多く見られるが、アカエゾマツのほうが葉が短いため一見して区別できる。

アカエゾマツとエゾマツの違い

一年枝の毛の有無、葉の長さと断面の形が異なり見分けやすい。エゾマツには変種エゾマツと変種トウヒの2変種があるが、アカエゾマツと分布が被るのは変種エゾマツである。変種トウヒは本州中部地方以南にあり、葉の長さが7-15mmと短い。

一年枝アカエゾマツは有毛、エゾマツは無毛
葉の断面アカエゾマツは菱形、エゾマツは扁平
葉の長さアカエゾマツは6-13㎜、変種エゾマツは10-20mm
アカエゾマツ 一年枝は有毛、葉は短く断面は菱形
エゾマツ(変種エゾマツ) 若枝は無毛、葉は長く断面は扁平

アカエゾマツとヒメバラモミ、ハリモミ、イラモミ、ヤツガタケトウヒの違い

エゾマツ以外のトウヒ属4種はアカエゾマツと分布が被らない(4種とも福島県より南に分布域を持つ)。
形態的には、アカエゾマツの一年枝には赤褐色の毛が密生するのに対し、他4種の一年枝は無毛かまばらに毛が生えるのみである点で識別できる。
ただし、ヤツガタケトウヒの中には一年枝に褐色の腺毛が生えるものもある。

アカエゾマツとトドマツの違い

どちらも北海道に分布するが、アカエゾマツはトウヒ属、トドマツはモミ属である。そのためアカエゾマツは葉枕がある、葉の断面が菱形である、葉先が尖るといったトウヒ属の特徴を持つ。
一般的には葉の長さが大きく異なるため一見して区別できる。

アカエゾマツ 葉は短く断面は菱形、葉先は尖る。葉枕がある
トドマツ 葉は長く断面は扁平、葉先は丸い。葉枕がない

文献

1)大橋広好・門田裕一・木原浩・邑田仁・米倉浩司(編) 2015.『改訂新版 日本の野生植物 1 ソテツ科~カヤツリグサ科』平凡社.
2)林将之 2014.『山渓ハンディ図鑑14 樹木の葉 実物スキャンで見分ける1100種類』山と渓谷社.

編集履歴

2021/7/1 公開